田部井さんの「ゴキブリ体操」

夕方帰ってテレビをつけたら、田部井淳子さんの顔が出た。NHKが追悼番組をやっていた。希望にあふれて上京した大学時代に、福島生まれと方言を意識して精神バランスを崩した。これが最初の人生の岐路になっていく。大学に戻って誘われた奥多摩へのハイキングが、この人を自然の素晴らしさに導いていく。
 
エベレスト登攀の途中に雪崩で負傷するが、シェルパと二人だけで成功する。「何も考えず一歩一歩進んだ。頂上でもう登らなくてもよいと思った」。そこから眺た山々の姿に感動したことで、この人は自分の使命を確認できたのだと思う。その後の登山人生で一貫していることは、自分自身に対する誠実さであり、実行力だ。
 
ガンとの戦いでも姿勢は変わらない。雪崩で死の恐怖を体験しているので、冷静に向き合うことができた。人生での究極ピンチを何度か経験したので、最期まで生きる意味を噛み締めている。そこが凄い。10年前に田部井式ストレッチの新聞記事を見て、今でも仰向けで手足をばたつかせる「ゴキブリ体操」を継続中。