百田尚樹、映画「永遠の0(ゼロ)」の宣伝過剰?!

先週から百田尚樹がメディアを《乗っ取っている》。彼の名前、著書、あの顔が新聞広告、インタビュー記事、バラエティ番組にあふれるほど出ている。もちろん、21日から公開される映画「永遠の0(ゼロ)」のための宣伝活動である。主演・岡田准一などの出演者と一緒に出まくって、前評判を盛り上げようとしている。気に入らない。
 
 小説「永遠の0(ゼロ)」はたいぶ前に読んだ。同世代の友人たちもかなり読んでいた。「君も読んだの!?」、「いゃー、一応読んでおかなければと・・・」。こんな会話を何回かした。零式戦闘機(ゼロ戦パイロットにまつわる小説で、戦争の意味、家族の愛を微妙に絡ませている。2006年出版以来、大ベストセラーになっている。
 
 土曜、日曜にテレビをつけたら、百田尚樹の顔が出てくるし、今朝の読売からなんと朝日まで相変わらず書籍広告ほかに出ている。これから一ヶ月は「永遠の0」オンパレードで、さぞかし映画館には老若男女が押しかけ、社会現象としてマスコミに取り上げられるだろう。映画は、この夏以来の「零戦」ブームを起こしそうだ
 
 小説の中で、姉の恋人・新聞記者はステレオタイプの正義主義者。「零戦による特攻はテロだ」と断定する。明らかにA新聞社を意識している。その傾向はあるかもしれないが、デフォルメ過剰で作者に嫌味を感じる。小説のつくりは、巧妙だ。テレビの構成作家を長い間やってきたので、読者の感情コントロールに長けている。
 
 最初に、気に入らないと書いた。この小説がマーケティングによって書かれているからだ。かつての小説や映画などのヒット作品の「いいとこ取り」で構成している。それで読者が涙腺を緩めたり、登場人物に同感するツボを巧みに刺激している。あの「きけ、わだつみのこえ」読了時の衝撃に比べたら、後味が良くない小説だ。