「ツブの塩辛」は故郷の味

 「大丈夫か?」、浦和に住む高校同級生のMくんが昨日坂戸まで会いに来てくれた。「だいぶ元気になった。お茶でも飲みに行こう」と彼の車に乗り込んだ。「行きたいと思っているコーヒー屋さんがあるんだけど」、「OK―!!」。自宅から10分弱の「星乃珈琲店鶴ヶ島店」の窓際席でゆっくりと近況を話し合った。二人で直接会うのはなんと昨年12月以来だった。
 
 同級生の話になった。「取手のKくん、よく坂戸まで来たね!!」、「うん、小旅行みたいだ、それにしても暑過ぎる、と言ってたよ」。取手では利根川の風が流れるらしいが、坂戸から熊谷は熱波が滞留している。「Kくんはエネルギッシュだからなぁ」と二人で納得した。11月半ばの「東京ふるびら会」には一緒に行く。Kくんや同級生の仲間も出席するだろう。
 
 子供の頃に食べた「積丹半島の味」を懐かしく話し合った。茹でたジャガイモにイカの塩辛をのっけてパクッと口に入れる。今はこの種の食べものに一番感激する。かつて大編集長だった評論家が「久末くん、僕の年代になると15、16歳の時に母親が作ってくれた食べものに味覚が戻るのだよ」と話していた。当時は理解できなかったが、今は良く分かる。
 
 夕飯のおかずはゴーヤチャンプルだったが、M君が帰ってから決めていたことがあった。6月に買ってきた「ツブの塩辛」を冷蔵庫から出して開封、食卓に上げた。チャンプルの匂いとツブの塩辛の匂いが鼻腔で混じった。モーレツに食欲が刺激された。「沖縄と北海道の組み合わせか!?」と無言で語った。「潮の香りは気を鎮める」らしいが、やはりツブは旨い。