ブルトレ「北斗星」廃止へ

  最後のブルトレ北斗星」が廃止されるそうだ。今朝の新聞もTVニュースも一斉に報じている。来年3月のダイヤ改正北海道新幹線の試験運行との調整が難しいらしい。かつて札幌出張で乗ったが、飽きてしまって長万部駅で我慢できずに降りた。駅の売店で暖かいお茶を飲んで鈍行列車に乗り換えて余市駅を目指した。これがまた予想よりもはるかに遠かった。
 
 当時、大手医薬品会社のPR誌編集に協力していて、昔の会社の先輩だったM編集長と一緒だった。10歳近く年上のMさんは「飛行機には絶対乗らないから。Q 坊(小生をこう呼んだ)、『北斗星』で一緒に行こう。なあ、頼むよ」と何回も言った。「いえ、カメラマンと飛行機で行きます」と答えていたが、何回目かに高い飲み屋で口説かれ、つい折れてしまった。
 
 Mさんは極度の飛行機恐怖症で鹿児島にも電車で行った。体は大きくて達磨さんのようなのに、文学青年の神経を時折みせた。彼は大宮に住んでいたので、待ち合わせて飲み物・食べ物を仕入れて乗り込んだ。二人で「フランス料理など御免被る、ベラボーメ!!」。16時間の旅。持込での宴はすぐに始まり、仙台を過ぎたころには何もなくなった。仕方ない、もう寝るだけだった。
 
 気がついたら青函トンネルを通過中だった。飲みすぎて頭が痛いし、熟睡していないので疲れ切っていた。北海道に入ると明けてきて暫し車窓の景色を眺めていたが、あと4時間近くも乗っているのはこりごりだった。札幌で翌朝落ち合うことにして、長万部駅で下車し大きく伸びをした。函館本線余市駅までアホになって森林や畑の景色を見ていた。北海道の色だった。
 
 停車する「銀山」、「然別」など各駅とも懐かしく小さかった。余市駅まで迎えに来ていた弟が「遠かったべ!」と笑った。我慢して札幌に行った方が楽だと茶化しているのだった。その余市駅が今「マッサン」ブームで賑わい、ニッカウヰスキーが大売れだ。ところで、北海道新幹線余市、小樽の山側を通過する。地元では「あんな街から離れた山の上に駅ができるなんて。ひどい話だ」とおおむね不評だ。