「アベノミクス」のアクロバティック性

 佐伯啓思・京大教授が「成長戦略が本格的に具体化されるこの半年が、安倍政権の正念場になる」(ビジネス情報誌「エルネオス」1月号)と指摘している。「実はアベノミクスとは、かなり分かりづらい政策であり、景気を浮揚させ、成長路線に乗せるためには『何でもあり』なのだ」と喝破している。「グローバル競争も平等化政策も取り込めるのか」、と。
 
 その基本方向は「グローバル化の中で競争力を確保する」で、成長戦略もここから出ている。この考え方の軸は構造改革=市場中心主義あるいは新自由主義である。アベノミクスの推進は自ずと弱肉強食の方向に向いかねない。企業間格差、地域格差を拡大する方向に作用する。それは、いわゆる中間層が痛手をこうむり、両極へ分裂していく。(日本に限らず先進国の共通課題)
 
 その結果、賃金の上昇、雇用の確保という中間層から下層にかけての生活を安定させる政策を打たざるを得なくなる。このことはグローバル競争に対してマイナスに働く。それらを調整するためには競争力強化政策と同時に、平等化政策を取らなければならない。佐伯氏は「きわめてアクロバティックなことをせざるをえなくなるだろう」と指摘する。
 
 トマ・ピケティ著「21世紀の資本」をめぐる論議が加速している。小生にもU先生研究会や友人ジャーナリストから、膨大な著書の要約や著者インタビューなどが送られてくる。「富の集中」と経済格差がなぜ生まれ、今後どう解消していくのか。今朝の朝日新聞・オピニオン「経済成長を問い直す(上)」6人の視点で、佐伯氏の論考を検討することができる。ただ、元旦の朝日のピケティ・インタビューは少しずれてたが。