「春告魚(ニシン)送ったから」

   向春の候、北の地から「昨日、ニシン送ったから明日夜着くよ」とさきほど電話があった。北海道・積丹町の妹からで、「小樽あたりでもうニシンが揚がってきた」そうだ。今日の積丹町は強風による地吹雪で、積雪も多いとの話。しかし、今年も春告魚(ニシン)が来たのだ!!
 
 先月初めに妹に一つのリクエストをしていた。「ごっこ、もし手に入ったら送って」。ごっことは深海魚で正式名称は「布袋魚(ほていうお)」。普段は深い海底にいるが、厳寒の時期に産卵のため海岸に寄る。メスは大きなお腹いっぱいに卵を抱えている。それで布袋魚。腹には吸盤があるのが特徴。
 
 「ごっこ汁を食べたい」、そんな願いを伝えておいたのがやっと実現する。「知り合いの漁師さんに頼んでいたが、ようやく獲れた」のだという。昆布で出汁(だし)をとり、豆腐とネギを入れてしょうゆで味つけする。卵はホクホク、身はプルプル。(コラーゲンのかたまり)。自分には至福の鍋なのだ。
 
 ごっこ+ニシン=この時期最強のご馳走だ。厳寒から向春へ。魚も時を知り、選手交代していく。「こっちはまだまだ春は遠い」と妹は嘆くが、北国にも確実に春は忍び寄っている。雪が解けたらすぐにも花壇の準備をしたい、妹の言葉に電話でうなづいた。積丹半島の海の色が早く春めくよう祈っている。