北海道・昭和のローカル菓子

 谷田製菓(栗山町)「日本一きびだんご」、協和製菓(倶知安町)「みそぱん」、高橋製菓(旭川市)「ビタミンB1、B2入りカステーラ」、タケダ製菓(札幌市・新琴似)「四角い仲よしあめせん」。
 
   北海道・積丹町の妹夫婦から昨日、弟さんの葬儀のお礼が届いた。「この度はありがとうございました」の文字の下に、上の北海道ローカル菓子が箱にきれいにつめられていた。4種類の菓子は、一瞬にして自分を小学一年生前後の日々に連れ戻した。幼い自分は満面に喜んでいた。
 
電話したら妹が「お兄さんが喜びそうなものを二人で選んで送った」と笑った。たしかに、上京以来約45年間、食べたことも見たこともなかった。「御菓子」というものではなく、子どものおやつに買ってもらったものばかりだった。それらは子どもの聖地・近所の雑貨店に並んでいた。4人兄妹が分け合って大事に食べたものだ。
 
かじったら歯にくっつきそうに甘い「きびだんご」、味噌の香りが妙な満足感を与えた「みそぱん」、一見高級そうな小振りの「ビタミンBカステラ」、手焼きごま塩せんべいの間に水飴をはさんだ「あめせん」。それらを浜の岩から海を眺めながら食べ、春先の屋根の上でかじった。
 
自分と一つ半違いの弟とはいつもけんかをした。父は出港するとき「けんかはしないこと」と大きな墨字で書いて、居間に貼っておいた。けんかがばれると、菓子は買ってもらえなかった。夕方、隣の母の実家に行くと祖母がこっそり買ってきて、われわれ兄弟に分けてくれた。
 
それで自分は祖父のキセルを掃除すると、5円もらった。そのまま祖父母と一緒に夕食を食べ、祖父が友だちとやる花札を飽きることなく、寝るまで見ていた。その間もそれらの菓子をかじっていた。昭和の北海道ローカル菓子は、ちゃんと健在だった。当時からは少しだけ進化しているようだが。