小女子はイカナゴの別名

 昨夜、北海道・積丹町の妹から連絡が入った。「生小女子(なまこうなご)を冷凍で送った。明日夜の最後の便で着くと思う。すぐに大鍋いっぱいのお湯に塩をたっぷり入れて茹でてね」。小女子イカナゴの別名で、成長すれば大女子(おおなご)になる。故郷の夏の風物詩の食材だ。
 
 祖父や祖母が小女子を茹でる匂いはなんとも食欲をそそった。今晩、記憶を頼りに小女子を茹でてみる。新鮮な磯浜のにおいが家中に広がるだろう。潮の香りというやつだ。海なし県の埼玉にいると、かつて育った日常風景がほとんどみられない。浜では独特の五感が働く。
 
 シラス丼、シラス干しのシラスは主にカタクチイワシの稚魚をいう。これも小女子とよく似ていて、香り高い食材だ。幼い子どもたちをつれていった内房の、小さな駅の近くで食べたシラス丼は醤油の香りがマッチして全員完食した。今晩茹でた小女子を米飯に盛り、醤油・ワサビで食べてみよう。
 
 イカナゴと書いて、大阪でお世話になったAさんを思い出した。経済団体の総務部長で、なにかと面倒をみてもらった。その後、退職して大学に勤めていると聞いた。神戸・須磨区に住む彼は毎年、イカナゴの「釘煮」を送ってくれた。二人で飲み歩いたころが懐かしい。