蝉鳴く

 「蝉が鳴きました」、昨夜の首都圏ニュースが伝えた。昨日お昼すぎ、わたしも聞いた。二、三回だったが、「ジージー」とややか細い鳴き声だった。デビュー間もないからだと思った。一週間もすれば電柱や大きな木の辺りからの大合唱になるだろう。
 
 大きなニュースが蝉の鳴き声よりもうるさい。いろいろな種類の顔たちが留めることなく吠え続けている。テレビからのニュースはうるさく、美しくない。観るものに考えさせないほどだ。それなのに次々とニュースにあわせてチャンネルを変えている。
 
 鳥越俊太郎氏の声と文字が痛々しい。話す言葉に切れがなく、手が硬く緊張している。手を手で押さえているようにみえる。文字は力弱く頼りない線だ。昨日はかなり緊張していたからか、顔色も良くなかった。命を削ることだけはないように祈る。