映画「戦争と平和」

今朝の日経新聞「春秋」は、『映画「ローマの休日」に、女優オードリー・ヘップバーンが古い広場で…』と書き出していて、昨日観た10代半ば役のヘップバーンを思い返した。録画しておいた映画「戦争と平和」(1956年公開)で伯爵家令嬢を演じた。希代の美女をどう表現すればよいかを知らない。
 
この映画は米伊合作で、ロシア帝国貴族、軍人、そしてあのナポレオンまでが英語でセリフを言うのがなんだか可笑しかった。トルストイの原作とはだいぶ形を変えているが、その本質は十分訴求されていた。映画の脚本の力というものにあらためて驚愕を感じたのだった。

映画はトルストイの言葉「人生を愛すことは神を愛すことである」で終わる。大きな時代の流れの中で、人は流されていく木々の葉にすぎない。しかし、一枚の木の葉が願うことは、自らを生かしてくれた人々への深い感謝の思いである。ほとんどの映画はこの方程式を解いていくプロセスとラストシーンだ。
 
 へップバーンとともに主役をつとめたヘンリー・フォンダの演技、とくに顔の演技は一種の神がかりで不思議な色気すら感じた。シェークスピア劇役者や、歌舞伎役者に通じるみたいな表情を瞬間的に見せた。オードリーも、ヘンリー・フォンダも世界的スターとして君臨した。