城山三郎『ただ一人、「おい」と呼べる君へ』

朝刊を読み終え夜の番組を録画するのでTVをつけたら、城山さんの顔、ビックリ。NHKBS『ただ一人、「おい」と呼べる君へ~城山三郎 亡き妻への遺稿~』が始まったばかりだった。奥様が亡くなってからの作家の姿を細かく撮り続けている。
城山さんの『そうか、もう君はいないのか』 (新潮文庫)をかつて読んだり、TVでそのことが放映されたのも観た。今回の内容はその延長上にある。城山さんと向き合うとき、背筋を伸ばして深く息を入れる。そのように作品を読んできた。
「静かに行くものは穏やかに行く、穏やかに行くものは遠くまで行く」。城山さんが好んだ言葉だ。若い頃から箴言の魅力に惹かれ、生きる指針としてきた。静かに、穏やかに行きながら、堅く信念に生きる姿勢は、若い当時あこがれた。
 仕事の対談で城山さんに登場してもらったことがある。大手石油会社店主との経済はもとより文化論まで及ぶ話し合いは3時間近く続いた。若くて細い自分はこのとき一つの決意をした。知識ではなく教養が必要だ。