それぞれの死に方

 「う~ん!」、しばし深く沈黙。昨夕放映のNHKドキュメンタリー「ありのままの最期」を観終わった。ガン患者に理想の死に方を問いかけていた僧侶が、自らすい臓ガンになった。末期ガン。その死に様をテレビカメラに収めたドキュメンタリーだった。
 本人は延命措置をのぞまず、最期の激痛や混乱を避けるために「眠る」薬の投与を告げていた。目を閉じる前に家族と最期の交流を行い、感謝を述べて去りゆきたい。そんな場面を本人も家族も信じていた。しかし理想の死と現実は違った。
 その医師は死を目前に混乱し、苛立ちを重ねた。看取る妻(医師)は延命措置拒否の約束を破り、心臓マッサージや強心剤注射を行った。夫に一日でも長く生きてほしい。死にゆく患者も揺れるが、家族もその場面に混乱するさまが映された。
 番組は「理想の死に方をみな望むが、死に方は一人ひとり異なる」と結んだ。僧侶と医師の夫婦の“往生際”をわれわれに提示。生きる者全員に問いかける己の死に方。最期には、ほぼ意識がない場合も多い。なにを見て死んでいくか。