「♪あれからニシンは、オンボロロ」

 寒かった昨日、夜は三平汁だった。家人が「糠(ぬか)ニシンがもう一尾あるから」と言って朝から塩抜きした。まだ残る塩味に糠ニシンのコクが加わり、昔の味を思い出させた。ジャガイモ、大根、白菜など野菜の甘さも鍋出汁に混じっていた。
 
 札幌の妹のメールには「お正月の荷物、25日到着で送ります。ニシン漬けもあったら入れておきます」。ニシン漬けも母の味で大好物だ。厳しい冬の夕食の一品で、母は漬物樽から薄氷を破いて凍っているニシン漬けを取り出した。
 
 上京して食べたくなったらニュー新橋ビルの北海道料理「ユック」にランチに行き、ニシン漬けをつけてもらった。生まれた昭和22年頃からニシンは獲れなくなった。平成が終りを迎える。ニシンがまた遠くなる。三平汁も、ニシン漬けも・・・。
 
 「♪あれからニシンはどこにいったのか・・・、オンボロロ…」、かの「石狩挽歌」をうたう北原ミレイの声が埼玉・坂戸には途切れ途切れしか届かない。年取った自分が流木に腰掛けて日本海を見つめている。何を探してきたのだろう、この齢まで!?