毒アゲハへの擬態

 「毒チョウへの擬態率 本物の数で増減」、木曜日(13日)の朝日・科学面にあった記事が面白い。興味深いので切り取って手元に置いた。
 
琉球列島に生息するシロオビアゲハの一部のメスが、毒をもつベニモンアゲハに姿を似せて天敵の鳥から逃れる。ベニアゲハが多い場所ほど擬態率が高い。擬態した一部のメスのシロアゲハは寿命が短いことが知られている。この擬態率はアカアゲハが多い島ほど高かった。琉球大研究チームが立証した。
 
まず天敵である鳥から逃れるのが一部のメスだということ。シロアゲハのメスは子孫を残していくために、己の命を削って擬態するのだ。なんと美しく悲しい現象なのか。おそらく何万年もかけて得られた生存遺伝子によるのだろう。
 
多くの生物でみられる種の保存の神秘には感動する。その裏には人間社会で繰り広げられる“生きるための擬態”が透けて見えそうだから。宮部みゆき浅田次郎ならどんな物語に書き上げてくれるだろう。一人空想する土曜日午後。