豚もつ煮込み

 

 「もつ煮込み、頼む。ショウガをたっぷり入れたのを」。病院に向かう車中で家人に伝えた。体の芯から冷える寒い日だ。体調も不安定で弱含み、冷気疲れでだるさ続き。治療スタッフによれば「今年はとくに不調な人が多い」とか。

 

 夕食のもつ煮込みに唾液があふれた。長ネギとニラも入っている。七味をかけて味噌味の汁をすすりながら舌全体で旨い! このエネルギーが欲しかった。黙黙と箸を進めた。このところ心底からの“食欲”が失われていた。

 

 かつて一回り年上の工業新聞記者に誘われて同紙蒲田支局に行った。そこでほぼ同年代の若手記者を紹介された。向かった赤提灯は狭くて混んでいた。その店のもつ煮込みは絶品だった。あっという間に二人は冷をお代わりし、焼き鳥にかかった。

 

 あのはち切れんばかりの豚もつほど迫力はないが、昨夜のわが家のもつ煮込みもパワーがあった。久しぶりにどんぶりの底まで食べ尽くした。さて真冬本番へ突撃だ。