狸小路・名曲喫茶「ウィーン」

  JR北海道の車内誌「The JR Hokkaido(6月号)と、倉本聰の「風のガーデン・貞三先生の花言葉」が食卓の横に置いてあった。家人が6月末に4日間、北海道に行って来たときに持ち帰ったものだ。JR車内誌に懐かしい思い出を誘う記事を見つけたので、今日はこれを書く。狸小路の「ウィーン」のことだ。
 
 狸小路7丁目にクラシックの名曲喫茶「ウィーン」があるのは、札幌に住んだことのある方ならご存知だろう。この小路の最後のアーケード街が7丁目で、「ウィーン」は古い二階建ての建物の地階にある。現在もマスターの横山信幸さんが昭和34年にオープンした。いま78歳とある。小生が通っていた頃、横山さんは30代半ばだったことになる。
 
 先輩たちは気に入った本を小脇に抱えて「ウィーン」に通った。誰かに紹介されて初めて店に入ったら、オーケストラの圧倒的な音量が店を満たしていた。お客のそれぞれが目を閉じたり、本を読んだりしながら音の世界に浸りこみ、そして、ゆったりとコーヒーを飲んでいた。それが当時のスタイルだった。新入生は直ちにこの洗礼を受けたものだ。
 
 後年、札幌出張の際、散歩がてらに「ウィーン」を訪ねたことが何回かあった。いずれも入り口は閉じていて廃業したのかと思っていた。記事には午前11時半から夕方6時までの営業で定休日はない、と書かれていた。仕事が終了後に行ったので、午後6時以降だったのだろう。一時、この建物の一階にビリヤード場があり、ビリヤードもここで初めて経験した。