民主党分裂

  = 「間違い」という言葉が示す通り、日本の芸道では「間」が重視されてきた。「間は魔だ」というのは歌舞伎の六代目尾上菊五郎の有名な言葉だが、それは九代目市川団十郎のこんな口伝に由来する▲「間というものには二種(ふたいろ)ある。教えられる間と教えられない間だ。教えてできる間は間(あいだ)という字を書く。教えてもできない間は魔の字を書く。私は教えてできる方の間を教えるから、それから先の教えようのない魔の方は、自分の力でさぐり当てることが肝心だ」▲「可能性の芸術」といわれる政治も「間」の大切な世界であろう。しかし消費増税法案の衆院採決で反対票を投じた小沢一郎民主党元代表とそのグループの離党にいたる「間」の延び方や抜け方はかなりのものだった。むろん小沢グループ民主党の双方においてだ。=
 
 今朝の毎日「余録」の書き出しである。ここで指摘している小沢G、野田執行部双方の間延び感と間抜け感は、誰もが想像した以上にひどい舞台を露呈している。カミソリのような鋭利さも、ナタ切りのような骨太感もない。案の定、喜劇でもあり、悲劇でもある。もっとも恐るべきことは、劇場には観客がまったくいない状況であることだ。政治家の叫ぶ「正義の言葉」ほど空しいものはない。野田氏の「心から、・・・」も、小沢氏の「国民生活第一・・・」も繰り返されるほど、梅雨空に飲み込まれて人心は乖離する。
 
 読売・解説面の「論点スペシャル・小沢新党と政界再編」に御厨貴・東大客員教授と川人貞史・東大教授の簡潔な見解が述べられている。今後の動向を占うには、一読に値する。御厨氏は「福祉政策を軸とした政界再編が一番いい。そこを追求していくと、この国の未来が見える」とかすかな希望を示している。川人氏は「小沢氏が政界再編の引き金を引くかは不明だが、再編があるとすれば小沢氏は数合わせ、野合により細川政権のような『ガラス細工』の新政権を再び狙うのかもしれない」と指摘している。