大阪発イベント「維新の会」の行方

  今から約10数年前、小生は社会経済生産性本部(現・日本生産性本部)発行の「生産性新聞」編集委員として、全国の優良企業を取材して歩いていた。また、都内ではもちろん、大阪で開かれる関西地域の経済フォーラムもほとんど取材した。2000年前後から関西経済の低迷はますます深化していった。経済フォーラムや経営シンポジウムでの代表幹事の挨拶を聞いていると、大阪復興には大きなスケールでの「イベント」が必要であることが強調された。
 
 前置きが長くなった。今回の橋下徹大阪市長による「日本維新の会」旗揚げは、大阪発大型イベントの前奏なのだ。次の総選挙の結果を見なければその後の展開は分からないが、とにかく大型プロジェクトはスタートした。大阪発関西再生イベントの始まりを告げる花火はすでに点火された。「東京にまけるな!!」、この大阪人の怨念が燎原の火のように全国に広がりつつある。しかし、これから本格的な社会的吟味が始まる。
 
 大阪はいまだ「大阪万博」の熱狂的な成功体験に金縛りにされている。かつて取材に行くたびに「大阪オリンピック構想」や「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン誘致」などへの期待が関西復興のキーポイントとして熱く議論されていた。大阪の経営者は、考えていたより「夢見る経営者」たちであった。東京の経営者のクールさとは明らかに異なっていた。その延長上に「橋下氏による大阪維新の会」が位置づけられている。万博プロデューサー・堺屋太一氏がその象徴である。
 
 だが、「日本維新の会」も今回のみの一時的成功の後に、やがて空中分解していくだろう。国政の場面で素人集団はズタズタにされる。なぜならば、彼らのよりどころがポピュリズム一点だからだ。現在の多様化・複雑化が進む社会では、その核を見つけ出したと思ったらすぐに転移していく。さらにはこれまでのような恫喝的な締め付けだけでは、人心は動かない。官僚も他府県首長も、そして支持者もそっぽを向くことになるからだ。「イベント」である限り必ず終わる。