ドジョウの噛み付き

   これで永久に野田首相は「うそつき」と言われなくなった。自らの意思で「16日解散」を打ち出し、党内の早期解散反対議員からの引きずり落としを回避した。昨夜はどの番組も「乾坤一擲」と叫んでいたが、早い話が政界「アウトレイジ」の一場面である。やるかやられるか、だれが味方で、だれが敵か、やるとすればいつか!? 野田首相が安倍総裁に「党首討論で勝った」とか、「自爆解散」だとか報道ではさまざまな見方が出ている。明日の形は分からない世界だ。
 
 たしかに昨日の党首討論では野田首相の捨て身の開き直り発言がインパクトを与えた。追い込まれればドジョウも噛み付くのだ、と明快に示した。野田氏の大きな顔から久方ぶりにオーラが吹き出ていた。それにしても安倍氏はうろたえて全うな斬り返しができなかったのだから、あの懐の狭い岡田副総理からさえも「政治家としての器が小さい」と言われてはしょうがない。あの何度も「約束ですね。よろしいんですね」と繰り返す姿は見たくなかった。明らかな戦略負けだ。
 
 政治の世界でよく聞く台詞に「一寸先は闇」がある。昨日は開演初日であった。きょうは水面下でさまざまな動きが行われ、明日、一幕目のクライマックスを迎える。ひとつだけ疑問なのは、輿石幹事長がどの時点で「16日解散」を首相から聞かされていたかだ。これまでも「一心同体」なのか「異体同心」だったのか。あの甲州ジジイの腹の中は魑魅魍魎だ。それにしても日本全体を依然として悪い気圧配置が覆っている。かの小沢一郎氏は完全に沈没した。