「内なる多様性、外なる統一性」

 日曜日午後、都内で「組織が再活性化するために」をテーマに30分ほど話す機会があった。最初に「日経ビジネス」が1983年に打ち出した「会社の寿命30年説」を取り上げて、成長と衰退が裏表一体で同時進行していくことから話した。成功体験がもたらす同質性の弊害である「ゆで蛙」現象が内科的に進んで、衰退の道を歩むことになるとの結論だ。
 
 これを克服する方法は、会社全体の「自己革新」が継続して行われることが求められている。現状維持では守りに入りまもなく滅びる。弛まない攻めの戦略が新たな成長の持続を可能にする。それを実現にするのは人財であり、とくに「ヨソ者」、「若者」、「バカ者」の活用である。今風にいえば「ダイバーシティ(多様性)」の取り込みが大事だと述べた。
 
 数日前に某研究会報告が届き、「Inner Diversity Outer Integrity」(内なる多様性、外なる統一性)がキーワードとして強調されていた。石角莞爾著『ユダヤの「生き延びる智慧」に学べ』(朝日新聞出版、2013年4月)にある言葉だ。多様で自立した人々が、一致して目的を共有する。ユダヤ人に限らず、会社でも組織ダイナミズムが活発に機能していく。
 
 今朝の朝日・オピニオン欄で内田樹(うちだ・たつる)氏が「今回の参院選有権者は『一枚岩』政党を選択した」と語っている。自民、公明、共産各党のこと。民主や維新は「党内分裂気味で、綱領的・組織的統一性がない」ので支持されなかった。「ねじれの解消」も同根のものだと断言する。かつての「百家争鳴」型から「均質的政党」への選好だ。
 
 では、なぜ日本人は統一性の高い組織体に魅力を感じるようになったのか。「スピード」「効率」「コストパフォーマンス」を政治に過剰に求めるからだ。内田氏は「私の仮説である」と述べている。これほどの未来の見通しに対するシニカルさは歴史上初めてだとも指摘。「朝三暮四」の故事を引用した真意は「未来の豊かさより、今の金(かね)」への警鐘である。
 
 多様性を排除して、同質性に向かう組織を待っているのは「衰退」の二文字だ。