堺雅人の演技力
1985年(昭和60年)8月12日夕方、日本航空123便が群馬県上野村の御巣鷹の尾根に墜落した。羽田発伊丹行きのジャンボジェットで、乗員乗客524名のうち死亡者数は520名、生存者(負傷者)はわずか4名だった。お盆入りの日本全国に沈痛な空気が重く垂れた記憶は今も覚えている。今日も追悼ニュースが流される。
この事故をテーマにしたのが横山秀夫の小説「クライマーズ・ハイ」だ。それを原作に2005年にNHKがドラマ化した。主演は佐藤浩一。2007年には東映が映画化し、主演は堤真一だった。両者が演じた事故全権デスクの苦悩と決断を軸に、地方新聞社内の激しい動きが描かれた。佐藤と堤の全権デスク像はやや異なった。
この映画に社会部・県警キャップの佐山役で堺雅人が出演した。自分が彼の演技を意識して見た最初の映画だ。表情と体で表現するその演技力は、当時は練れ切っていなかったが個性的ではあった。2004年の映画「壬生義士伝」(主演・中井貴一、助演・佐藤浩一)で演じた沖田総司役ではまだ演技に重みはなかった。