入学試験

大学入試センター試験が今日と明日、全国693カ所の試験会場で行われる。厳しい寒さの中、受験生の健闘を祈る。大学入試といえば、自分はにがい思いを2回もしたからだ。合格するつもりが、あっさりと落ちた。母は以前から「その傲慢さが失敗につながるよ。一歩だけでも謙虚になったらー」と忠告してくれていた。
 
母の言うとおりだった。現役で受験した志望校の試験は「かなり良くできた」と思った。答合わせをしても、いい線を行っていた。しかし、合格発表には自分の名前がなかった。意味が分からなかった。「なぜだ?」の繰り返し。当時の家の事情や下に3人の弟妹がいることから、父には「札幌の予備校に行かせてほしい」と言えなかった。
 
自宅で受験勉強をすると自分で決めて、父に頼んだ。「行かないのか?」と言ってくれたが、「大丈夫だ」と答えた。余市高校時代の担任A先生に報告に行った。「そうかー」と言って、数日後手紙をくれた。自分を含めて何人かの先生が時々みてくれること、古平高校のT先生にも指導してもらうこと、模擬試験は高校で受けられるようにしたこと。
 
翌年春、最初の受験は「良くできた」と思った。しかし、合格しなかった。二校目の試験は難しくて出来は悪かった。「駄目だと思う。運転免許を取って、東京のデザイン専門学校に行きたい」と父に頼んだ。父は何も言わず了承した。同級生のF君がわが家に走りこんできた。「ラジオの発表で君の名前が呼ばれた。合格だ」。満面笑顔でそう伝えてくれた。
 
荒れる海に浮かぶ木の葉のように、少年の心は乱高下した。不合格がわかったときの絶望感はあの時だけのものだが、一生自分の胸に突き刺さったままだ。19歳で故郷・北海道古平町を出て、人生が始まった。札幌での学生時代、就職で上京してからのさまざまな出来事。今でも母が言った「高慢さが失敗の素」を繰り返す。いまだ目標未達だ。