唯川恵の蜷川幸雄本書評から

 食卓の左側に一昨日から読売新聞書評のコピーを置いている。作家・唯川恵蜷川幸雄著「演劇の力」(日本経済新聞出版社、2200円)について書いたもの。日曜日の書評からそこだけをコピーした。唯川恵らしい分かりやすく軽いタッチで、あの蜷川の激しい演出風景について見方を述べている。その中の数行に反応した。
 
「自意識という飼いならすことのできない性質は、実は蜷川さんの骨格のような存在になっている。それは実に『恥ずかしい』に繋がっていて、…。更に『人間はなにをうれしいと感じるかより、なにが恥ずかしいかでみた方が分類しやすい』とも語っている」
 
蜷川氏といえばいかにも難解な人物風で、変なことをいうと灰皿が飛んできそうだ。ただ、人間を見る時に相手が「なにを恥ずかしいかでみる方が分かりやすい」との視覚は世間ではあまり聞かない。彼特有の逆説人間論だろうが、「確かに―」とも感じる。しかし、自分に当てはめてみれば、実はかなり恐ろしい言葉ではあるのだ。