中国・西安にいるTさんの旅行報告

   西安は4~5日前までは寒かったのが、急に汗ばむ陽気になり初夏を思わせる季節となりました。春はわずか数日しかない、という感じです。西安に季節は「冬と夏しかない」とよく言われています。中国の春節(お正月)に列車で旅行しましたので、そのときの一部をお読みいただければ幸いです。
 
   初三(正月3日)の2月2日、隣接する四川省省都成都への旅行のため、夕方西安駅へ向かった。アパート近くのバス停から駅までおよそ20分、いつもよりすいてはいたが、駅前の大広場は帰省客なのかあるいは帰省から戻る人なのか、大変混雑していた。広場に張られた臨時の待合用大テントも駅舎内の待合室も座る席がないほどの人で溢れていた。列車で目的地に着くまでには、5度切符のチェックを受けなければならない。
   さて、この寝台急行は西安始発19時45分、成都終着は翌日午前11時50分で所要時間は16時間5分。一番下の寝台席を同僚にインターネットで確保してもらったが、帰りの席は一番上の段しか取れなかった。列車はなんの合図もなく(正確にいえば、なかったと「思う」)、時刻どおりに動き出した。列車は19両編成ですべての寝台席が埋まり、網棚は荷物であっと言う間にいっぱいになった。それぞれが自分の席を確保すると、車内にはホッとした空気が流れた。
   私が利用する席は硬寝台(硬いベッド)の下段で料金は208元(3640円)。3段ベッドが二つの6名のスパンだ。ベッドに仕切り用のカーテンなどはない。以前中国に駐在していた知人の話では「カーテンがないのは防犯上の意味もあるのでは」という。6名の乗客の内訳は、若いカップル(雰囲気からなんとなく兄妹の様子)、もう一組の若いカップル、一人の青年、そして私。ベッド2段目3段目の乗客の多くは寝るとき以外、通路窓側の壁に設置されてある小さなチェアに座って過ごす。
 列車が動き出して間もなく、カップ麵を手にした乗客たちが車両のコーナーに設けられた給湯器を行き来し始めた。時計の針はまもなく夜の8時を指す。私も西安駅前で求めた4元[70円]の即席カップめんを持って給湯器に向かった。列車の中間の車両には食堂車が付いているが、街中の2-3倍の値段のうえ、味がイマイチなので利用者は少ないようだ。2年前、西安~青島間(寝台急行23時間)に乗った時利用したことがある。
 新年3日目という「微妙な日」の乗客の内訳は、これから帰省する客と早くも故郷から都会に戻る客、そして旅行客といったような人たちであろうか。一番賑やかなのは2~3歳くらいの幼児たちで、嬌声(きょうせい)を発しながら車内を走り回る。一人っ子政策の影響か、甘やかして育てる親が多くなってきて子供が我儘になる、と指摘する中国人は多い。「小皇帝」と呼ばれる由縁だ。
 9時ごろになると車掌さんが切符とカードの交換にやってきた。車掌さんは各車両に2人乗務しているので、食堂車を除き18両で36名ということになる。そのほか、車内販売員が3~4人、車両整備員が1人か2人[特定区間だけかもしれない]など、列車には大勢の鉄道関係者が乗り込んでいる。
  乗客は車内の飲食でかなりのごみを出すせいか、1~2時間ごとに車掌さんが大きなビニール袋をもってゴミ入れのゴミ回収に来る。ときにはホーキを持って床のごみを集める。6人べッドの各スパンの窓際には、大きな灰皿かと見間違うような屑入れ容器が置かれてあるが、向日葵やスイカの炒った種を好んで食べる人が多く、食べカスは床に捨てることが多い。そして9時45分ごろ天井の照明が消え夜間用に切り替わった。