「STAP細胞」と閉鎖社会

 STAP細胞論文をめぐる小保方春子氏と理化学研究所の攻防は泥仕合の様相を呈してきた。小保方氏はまだ本人が現われていないのでまったく理解できないが、理研側の姿勢にも大きな疑問符がつく。理研が新制度の「特定国立研究開発法人」指定に向けて手続きを進めていたという。閉鎖社会の「常識=非常識」が今、世間の目に曝(さら)されつつある。
 
 「デスバレー(死の谷)」、この言葉を10数年前に経営新聞の記事でよく書いた。企業の研究開発(R&D)部門が成果を出せない状況が長期間続けば、その研究自体が継続できなくなることを指していた。企業の研究開発が「短期間に収益を生む」ことを性急に求める時代の幕開けだった。今回のSTAP細胞論文事件の経緯を見ていて、そのことを鮮明に思い出した。
 
 今回の「不正・捏造」問題にも、背後には研究成果と研究資金の問題が大きく横たわっているようだ。理研理事長は、かのノーベル賞受賞者野依良治氏である。不正・捏造事件ともなれば、当然、理研及び野依氏に「傷がつく」ことは避けられない。一見、正当な手続きにみせた閉鎖的な解決方法で小保方氏一人に泥を擦(なす)りつけることだけは避けるべきだ。