「自分史」

   「自分は他の人よりも波乱にとんだ人生を生きてきた。この人生を語り切るのは難しいが、『自分史』として残す価値はある」。多くの人は心の奥底で秘かにそう思っている。不安で不景気な時代にはなぜか「自分史」作成の傾向が強まるという。
 
 今朝の読売・家計面に「そろそろ『自分史』」という記事がある。定年退職や子どもの結婚など人生の転機に、人はふと自らの軌跡を振り返るのだそうだ。自分史執筆の指導を行う講座や商品を紹介している。ややPR色の強い記事だが、理解できる。
 
 林真理子が朝日で小説「マイストーリー・私の物語」を連載している。自費出版専門の出版社の編集者が主人公だ。一昨日の分にこんな記述があった。
 
「特に小説の刊行を望む客の多くは、文学論を語ることを好む」、「自分はおそらく一生本など書くことはないだろう、と彼はひとりごちた」、「そして本を書くことなどない人生というのは、なんと安らぎと静謐(せいひつ)に充ちていることか」
 
昼前に宅配便で「望郷」(森瑤子著、角川文庫)が届いた。余市高校同級生のS君が送ってくれた。竹鶴政孝夫人・リタさんの生涯を綴ったものだ。「I君から借りて読んだら楽しく、感動したからお勧めする」とあった。政孝は自伝を残したが、リタさんの自伝はない。