「望郷」(リタさんの生涯)読了

  森瑤子「望郷」を読了。ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝夫人のリタさんの生涯を描いている。スコットランドから日本に来て、政孝を助けながらの喜びと辛さを女流作家の眼で浮き彫りにしている。この本を貸してくれたSくんは「楽しく、感動した」と、わたしに勧めてくれた。今日、次の余市高校同級生にまわす。
 
 前半でリタさんの父親が、こう語っている。「人間というものはな、自分の国の言葉が通じるところで生き続けるのが一番幸せなことなのだ。いいかね、人間の感情の中で何よりもつらいのは、望郷の念なのだ」。この言葉に反して、リタさんは政孝との結婚を独断で決め、日本で本格的ウイスキー誕生の支えになった。
 
 「望郷」、人間が生きていく大きな要素である。それぞれの「望郷」の念はそのまま各人の物語でもある。古今東西、この感情は共通なのだと改めて深く理解した。「望郷」という言葉から、わたしは父親を連想する。北海道江差町出身、古平町で家庭をもった。父は寝る前に、四人の子どもたちにいつも江差の話をした。
 
 明後日から6日間、用事で積丹半島の実家に行ってくる。わたしにも「望郷」の念はある。いつも車から海に突き出た丸山岬が見えてくれば、小さな声で父と母に「ただいま」と言う。