大型台風で石蔵に避難した記憶

   7月初旬なのに超大型台風が来ている。九州への上陸はほぼ間違いなく、昨日から沖縄方面には「特別警報」が出ていた。発生時から瞬間最大65メートルの強風が予測されていたが、昨夜の那覇の様子は恐ろしいほどだった。今週後半は関東に大きな影響がありそうだ。
 
 昔、台風は秋に来るものだと思っていた。北海道積丹半島にもいくつか大型台風は襲ってきた。日本海を北上して漁村と海を荒らした。遠いいくつかの記憶が蘇る。郷里・古平町は当時道内でも屈指の漁港だったので、人々はまず漁船の安全を案じたものだった。
 
 幼いころ母は明るいうちに4人兄妹を連れて、父の誘導で石蔵に避難した。その石蔵は父が船頭を務めるニシン網元の自宅横にあった。父はラジオを聴いて家族をその石蔵に保護してから、船や倉庫、漁具などに被害がないよう見回りを続けた。ときどき蔵に来て、母に外の様子を伝えた。
 
 石蔵はわが家から100m余のところで、かなり大きく、頑丈にできていた。家にいるとゴォーゴォーと聞こえた強風の音は、石蔵の中ではまったく聞こえなかった。むしろ静寂が不気味なほどだった。ろうそくの明かりが不安をなくしたが、なかなか朝は来なかった。「帰るどー」、父が迎えに来た。