「マッサンとリタ」(NHK出版)

   NHK朝ドラ「マッサン」が昨日から始まった。一昨日、友人が「マッサンとリタ」(NHK出版、今年8月30日発刊)を貸してくれた。英国人研究者のオリーブ・チェックランドが書いた本格的なノンフィクションだ。新聞の書籍広告でみていたので、そのうち買おうと思っていた。さっそく昨夜から寝酒代わりに少しずつ読み始めた。
 
 スコットランドの蒸留所で体験を重ねる中で、竹鶴政孝は本格ウイスキーづくりには良質の水が不可欠と理解した。竹鶴は「日本国内の地理を考えると、常に水質佳良にして、原料大麦が集め易く、燃料として石炭もしくは薪が得易く、鉄道および河水の便のあるところが必要になるだろう」、「樽の優れた材料もうまい具合に北海道で調達できる」と書いている。早くから北海道に着眼していたことが分かる。
 
 政孝は竹鶴家の三男だった。長兄は早稲田大学卒業後にマレー半島に渡り、ゴム事業に携わっていた。次兄は九州帝国大学を出た後、やがて北海道炭鉱汽船に勤め、札幌に暮らしていた。このため、政孝は三男ながら、家の跡取りとされていた。彼には当時、慶應義塾大学の学生だった弟もいた。次兄から聞かされる話が、政孝に北海道についての情報を与えていたかもしれない。そう思うと腑に落ちた。
 
 いま小さなJR余市駅に観光客が詰めかけ、徒歩すぐのニッカウヰスキー蒸留所に次々と向う姿が想像できる。実際、訪問者はどんどん増えているらしい。今年6月に帰郷した時にも街中ポスターだらけだった。いま駅前にはたくさんの「マッサン」幟(のぼり)が浜風に揺らぐ。町が活性化する契機になることを期待している。