「秋茗荷(ミョウガ)」

 「茗荷を食べると物忘れになるよ―」、そう言ってたのは母だったような気がする。その茗荷がどっさり採れた。我が家で毎年採れる秋茗荷だ。今朝もまだ台所のザルに入っている。大部分は家人が処理をして愛好家の友人宅数軒に届け、残りは冷蔵庫に入っている。我が家の軒下で自然に育ったもので、先日、家人が100個以上も収穫した。秋の恒例だ。
 
ここ数日間、夕飯ごとに何らかの形で茗荷が使われている。卵とじ、酢漬け、味噌漬け、糠漬けにも入っている。昨夜はソーメンの味噌汁に刻み茗荷が乗っかっていた。やはりこの香りは独特だと食べながら感じる。幼いころは食べた記憶がなかった。北海道の故郷ではなかったのかもしれないか、わが家では食べなかったのか分からなくなった。
 
ふっくらとした薄紅色の茗荷を見ていたら、これをいま流行の「絵手紙」に書けたらいいのになぁ!!と思った。もちろん自分にはその心得はない。最近、わが家に数人から絵手紙が届く。なかなか味わい深い風情を感じさせる。その人の知らない一面が描かれている場合が多い。それらの絵と文字はいずれも安らぎを与えてくれる。いい人生を送っている人たちだ。
 
 最近、とくに「物忘れ」が多くなってきた。忘れていることも忘れている。茗荷を連日食べているからか?! 来月あたり食卓の二人がお互いに誰かが分からないまま、まだ茗荷を食べ続けているかもしれない。一部は冷凍されているからだ。わが人生も茗荷期に入ってきたのかもしれない。