豊島ゆきこ「歌集・冬の葡萄」

  先月初め、川越市の「豊島ゆきこ」さんという女性から書籍小包が届いた。知らない人だったが開封した。「福本順次様と親しくさせていただいています。六月に出版した歌集です。送らせていただきます」。そう書いたメモが挟んであった。
 
 福本さんは隣の日高市に住む作家で、もう40年来の友人だ。わたしが少し年長だが、知り合った頃に彼は金融業界紙の取材記者だった。PR会社に勤めていたわたしは先輩から紹介されて、その後、一緒に文芸同人誌「兆(きざし)」を創刊した。
 
 彼は独特の文学的人脈をもっている。いくつかの文芸誌にかかわり、現在も小説に取り組む傍らブログ「行逢坂」で文学の香り高い日録を発信中。その言葉にこだわる姿勢には学ぶところが多く、穏やかな顔に隠された鋭い感性には目を見張る。
 
 届いた豊島さんの第二歌集「冬の葡萄」は入院のため、これまで読めなかった。これから少しずつ鑑賞していきたい。「冬には葡萄が手に入りにくくなる。しかし、グロー・コールマン(高級温室ぶどう)だけは売られている。家族とはそのぶどうのようなもの、と思う」(あとがきから)。
 
 「切り分くるりんごに輝く蜜ありてわが経し恋のとりどりおもふ」
 「夫とわれのしづかな生活(くらし)朝ごとに卵ふたつを寄り添わせ焼く」