「カスベ」の煮付け

 「カスベ」の煮付けをつくった。カスベはエイのことで、北海道・東北沿岸ではそう呼ぶ。元々はサメの仲間だったようだ。煮る時間を少し長めにすれば、身と一緒に軟骨も食べられる。独特の食感はファンも多い。コラーゲンたっぷりで冷蔵庫に入れると翌朝には「煮こごり」になっている。実際、手の甲など肌がツヤツヤになる。
 
 北海道積丹町の妹が先日、下処理したカスベを荷物に入れてくれた。そのうちの塊を二分して、深めのフライパンに水を入れ、皮ごと大きめにスライスした生ショウガを加える。沸騰してきたらカスベからどんどん灰汁が出てくる。これを丹念に取り除くのがコツ。酒、味りん、醤油、少量の砂糖を、母譲りの目勘定で加える。
 
 後は落し蓋をして煮込むだけ。クッキングペーパーの真中に小さな穴を開けて上からかぶせても良い。中火20分ほどで完成だ。柔らかくなって身が崩れやすいので、皿に盛り付ける時には注意を要す。味の沁みた白身は軟骨の並びにそって美しい襞(ひだ)になっている。グジャグジャになってはもったいない。これで完成だ。
 
 カスベでピンと来ない人は、エイヒレといえば分かるだろう。乾燥させたエイヒレは酒のアテでは一級品だ。煮付けも酒に良し、飯に良し。出来立ても煮こごりもどっちも◎。子どもの頃に父親の網にかかったカスベはご馳走だった。この魚は傷むとアンモニア臭を放ち、港で捨てられてカモメやカラスの餌になった。