「解散」騒ぎから現実逃避

   近所の御宅の庭木にミカンや柚子の実がたわわに連なっている。手を伸ばしてもちょうど届かない高さなので、少しだが残念な気持ちで通り過ぎる。スーパーで売っているようなまん丸で光沢があるわけではない。少し歪だったり、一部くすんでいるものもある。それらが妙に心を暖かくしてくれる。北国育ちの人間でなければ抱かない感情だろう。
 
 近郊の毛呂山町はわが国で最も古い柚子の産地だという。小川町にはミカン園が並び、東松山市にはナシ畑が多い。M先生の栗林も松山にある。狭山・日高市一帯は狭山茶の産地で名高い。生育に気候が向いているのだ。霊亀2年(716年)1799人の高麗人が移住して高麗郡が設置され、初代郡長として若光が赴任した。その人を祭る神社が高麗神社だ。
 
 気候温暖で、高麗川があるこの地方一帯には古代日本の原型の一部が残っているともいえる。不思議な読み方をする漢字の地域名があちこちに残っている。東松山には馬頭観音もある。騎馬民族に由来するのだろう。関東の馬文化の原点でもある。この広域地帯は熊谷、館林ほどの厳しい寒暖ではない。高度な文化を誇った秩父地方とも近い。
 
 少しの散歩で、この地の昔の人々の生活に思いをはせることができる。さて、ふたたび松山のナシ狩りや小川のミカン狩りに出かけ、越生(おごせ)の柚子湯につかるか。狭山茶を啜りながらそんな思いを味わっている。子供たちを連れて行った時期とは違い、彼らの家族に付いていく。仕上げは当然、松山・「ひびき」の焼きトンに決まっている。今日「衆院解散」、うんざり。