「喪中はがき」

 このところ連日、「喪中はがき」が届く。11月に入ったころから始まり、すでに12通になっている。友人たちからで父上か母上が亡くなったとの知らせだ。夫の母95歳、夫人の母94歳というはがきもあった。昨年も多かったが、今年はさらに増えるかもしれない。
 
 そのはがきを見て驚くのは親たちの年齢だ。各々86、95、107、89、91歳などと記されている。われわれ世代の親だから年回りからしてそうなるが、改めて長寿社会の現実を知らされる。それぞれの親が困難な時代にわれわれ子供たちを育ててくれたご苦労に感謝する。
 
 昨日届いた喪中はがきに深く胸を痛めた。埼玉・伊奈町Sさんが奥様を亡くされていた。「3月22日に67歳で永眠」とある。夫婦で「知らなかった」、「体が悪かったんだね」と短い言葉を交わして再び沈黙した。S夫妻の睦まじさにわれわれ夫婦はいつも教えられてきた。
 
 入社まもなく知り合った。彼は元大手食品業界紙記者だった。妙に馬が合い、浜松町の「ゴキブリ飯店」と呼んだ中華料理屋で安酒を飲み、飯を食った。店の偏屈親父はご飯を「ライス」と頼む客は断った。給料日には格上の店に行き「ショウロンポウ」をつまんで乾杯した。
 
 Sさん宅にそのうち行かなければならない。昨晩そう思いながら床に就いた。わたしの体の状態を知っているので、連絡をくれなかったのだろう。「向寒の折ご自愛ください 悟」と手書きの文字が目に沁みた。話す言葉は見つからないが、とにかく行って会うことだと心に決めた。