「伊奈かっぺいさん、」

   「こんにちは! 伊奈かっぺいさん」、病院での定期検査の帰りに乗ったタクシーのラジオから女子アナの声が聞こえた。「伊奈さんはシンガーソングライターで、ラジオディレクターで、イラストレーターで―」と延々とプロフィールを紹介した。1947年生まれとも。同じ歳だったんだ、と改めて思った。
 
かつてテレビで売れていた頃に、同年代だなと感じていた。しばらく名前を聞いていなかったので忘れていた。なんと彼はしっかりと活躍していた。青森のラジオパーソナリティーとして彼の番組を20年間続けているとのことだ。それでインタビューすることになったようだ。そこで、伊奈氏と電話がつながった。
 
伊奈かっぺいです、こんにちは!!」。おぉ、若々しい声だ。もちろん仕事柄明るくさわやかな発声はお手の物だろうが、それにしても鮮やかな声だった。毎週、旅先の話を台本なしでトークしている。日記を元にしている。そんなことを語っていた。タクシーが自宅に着いたのでそこまでだったが、「しぶといなぁ~!!」と感心した。
 
自分がやりたいことを思う存分やっている。いろいろな困難もあっただろうが、それを乗り越えてリスナーに楽しみと希望を与えている。68歳を目前にして、まだまだ現役そのものとしての意欲にあふれていた。才知あふれる人であるのは間違いないが、数分間の彼の言葉に動かされたのは「老いていない」ことだった。脱帽。