格差の解消

「格差があるという報道は掃いて捨てるほどありますが、どうやったら格差は解消するのか、ほとんど報道されていません。宇沢経済学でも格差が解消するとは思えないのですが、この問題しばらく考えてみるつもりです」
 
経済ジャーナリスト・Mさんのメールにこうあった。「宇沢」とは昨年秋に亡くなった経済学の巨人・宇沢弘文氏のこと。1974年に「自動車の社会的費用」(岩波新書)を発表し、都市開発・環境問題への疑問を提起した。「社会的共通資本」の整備の必要性を説いていてベストセラーとなり、現在も売れているロングセラーだ。
 
Mさんが指摘しているのは、最近、ピケティ・ブームもあって経済格差問題が叫ばれているが、その解決策がまだ誰からも示されていないことだ。宇沢氏の持論は「効率重視の過度な市場競争は格差を拡大させ、社会を不安定にする。大気や水道、教育、報道などは、市場原理に委ねてはいけない」との強い主張だった。
 
宇沢氏はあのフリードマンを「危険な市場原理主義者でアメリカ経済学を歪めた。その結果として2008年のリーマン・ショックが起きた」と厳しく批判した。最近、「加速するグローバル競争の拡大がさらに経済格差を広げていく」との見解が多く出てきた。Mさんはそんな時代背景のなかで、宇沢経済学を再検証しようとしている。
 
これは「資本主義が無限に成長を可能にするのか」との問いであり、「グローバル競争以外の何によって安定した成長が持続されていくのか」へのアプローチでもある。Mさんの「宇沢」に着眼した真摯な取り組みに注目したい。