「古本は出汁(だし)がら、買った値段は忘れろ」

重金敦之氏(エッセイスト、元朝日新聞編集委員)のブログ「オンとオフの真ん真ん中」にある文章におもわず苦笑いした。
 
出久根達郎さんが『本は、使い終わったら出汁(だし)がら、と思うこと』だといい、『買った値段は忘れること』と付け加えている」。
 

日本文藝家協会『文藝家協会ニュース』の5月号から、出久根さんが『作家の終活』というエッセイを連載し始めた。1回目は、『蔵書のあと始末』で、『古本の値段は時代に翻弄されて変わります』と『古本事情』について触れている。古本の価格はどん底といってもいいが、最も下がった本は、『個人全集が最たるもので、古書店もまず引き取らないだろう』と、実に悲観的な品定めをしている。図書館でさえ、嫌がるところが多いそうだ。
 愛着のある本を思い切るにはどうしたらよいのか」。

 
「本は出汁がら」、「買った値段は忘れろ」がその答えだった。わたしは先日、本を処分したばかりなので、この出久根氏の言葉がよく理解できた。心情的には残念、無残というところもあるが、そんな時代になっているようだ。
 
実用本位、効率第一の競争時代に、「本に含まれている出汁」を豊かに味わう時間を若者たちは持っているのか。嫌いな言葉だが「反知性主義」ともいわれる中では、出汁を味う鋭い味覚すら劣化させていく。若き友たち、寝ないで本を読め!!