「ニュースキャスター」

 筑紫哲也「ニュースキャスター」(集英社新書、2002年)を読み返している。蔵書処分から逃れた一冊だ。なぜ、これを読むのかは、最近のニュースキャスターたちを観ていて腑に落ちないからだ。もちろん筑紫の時代とはずいぶん変化しているが、報道キャスターのコア(基幹)は変わらないはずだと勝手に思っている。
 
 定時ニュースのアナウンサーとほぼ変わらないことを述べ、「明日も良い一日でありますように」と結ぶキャスター。視聴者の顔色をうかがいながらゲストに媚びたり、慇懃口調で誘導尋問するキャスター。視聴者ではなく、テレビ側の都合で拙速に出来事を解体していくキャスター、など。(本当は大越さんが懐かしいのだ!)
 
  こうした報道番組の魁になったキャスターの一人が、筑紫哲也だった。テレビの画面に炙り出される場面場面に立ち向かい、工夫を凝らして立体的な番組に仕上げた。新聞記者であり、TVキャスターだったからこそできたのかもしれない。懐古趣味ではない。この変動期に新たな触眼をもった報道キャスター登場を待つ。