秋深しの感

 「カブト虫、孵(かえ)っているよ」、息子が我々に伝えた。昨晩帰宅してまもなくプラスチックケースをかかえて見せに来た。なるほど数匹の幼虫がケース底の土のなかで蠢(うごめ)いている。「産卵したのも知らなかった」と彼は少し興奮していた。
 
 彼の妻・Nさんが友人からオス1匹とメス2匹が入ったケースをもらってきた。2階の居間に置いておいたら幼虫になっていた。オス、メス1匹ずつは死んだが、メス一匹は生きている。「(子どもたちに)見せたのか」、「いや、寝てるから明日見せてやる」。
 
土の中に芋虫のような3,4匹の蛹(さなぎ)は太っていて色艶が良い。皺が模様のように見える。腐葉土を買いに行くことと庭の土に埋めてやることを我々に話した。そういえば息子は子どものころ昆虫好きで多くの虫を飼育したのだった。
 
 親は死んでいくことで子どもを残す。自然界の摂理をきわめてリアルに理解した。こうして命は繋がってきた、と書けば大袈裟だが、そうなのだ。夕食の味噌汁に秋ミョウガが刻んで入っていた。毎年わが家で採れる。妻が今年初めて収穫した。