「泣かれても住民は途方にくれるだけ」

 横浜での大型マンション傾斜事件の報道は、今日から少し流れが変わるかもしれない。巨人軍3選手による野球賭博疑惑の拡大だ。広報専門家としてそんな空気を感じる。賭博疑惑ニュースが今後しばらく、テレビ画面、各紙誌にあふれるだろう。事件の底に社会部が飛びつきそうな要素、背景が広がっている。入り乱れたスクープ合戦の様相を呈する模様
 
それにしてもマンション事件で、旭化成は一人悪者になっている。対応の拙さからマスコミに隙を突かれ続けたあげく、親会社・旭化成の記者会見で総大将の社長が泣き、涙をハンカチで拭いてしまった。NHK、民放各局ともその画面・写真を大きく取り上げ、繰り返して放映している。今朝の日経「春秋」はズバリ厳しい。
 
【▼杭(くい)のデータ改ざんが発覚して1週間、ようやく開いた会見だが「なぜ」はまるで解消されぬままだ。問題がほかの物件に広がっている心配もあるのに、なんともぬるい対応というほかない。「深く、深く反省し」「誠意を持ち」「誠実に」……。こんな言葉を並べられ、ついには泣かれても住民は途方に暮れるだけである。】
 
 会見で社長はいかにも不器用で、弱々しかった。大丈夫かい―そう思った。身内に旭化成関係者がいるので、わたしは昔から旭化成のシンパだ。それにしてももう少し凛々しく説明してほしい。涙を流してもいいけどタイミングを間違えないでほしい。トップリーダーがこんなにメンタルが弱いのなら、今後の難課題に陣頭指揮を取れないのではないか。世間にそんな印象を与えてしまった。
 
 研究開発出身の素朴で実直な人柄なのだろうが、マスコミ対応を考えれば難しい時にトップであったといわざるを得ない。記者会見の練習をしてきた様子はあきらかだったが、中身のない対応をしていては結局「春秋」のように報道される。本日を境にして旭化成は充実したマスコミ対応に努めてほしい。会社の難局として位置づけ、あまり個人(犯人)責任を強調しないで、正面から問題解決を果たしていくべきだ。それが会社の信用回復につながる遠い近道だ。