NHKスペシャル「新・映像の世紀」

 昨夜、NHKスペシャル「新・映像の世紀」を観終って、不思議な感動に包まれた。「観て良かった」のレベルをはるかに超えたものだった。大袈裟に言えば、これによって自分の歴史を見る目が今後大きく飛躍するほどに感じた。そんな感慨だった。これまで50年間歴史関連を見たり、読んだりしてきたことが初めて脳内で有機的につながった。
 
  未公開映像がふんだんに使われた一回目の「百年の悲劇はここから始まった」は、第一次世界大戦を立体的に解剖した。映像に含まれる情報量は文字のそれをはるかに上回る。こうした歴史の流れの中で、毒ガス化学兵器を開発したドイツのフリッツ・ハーバー博士の悲劇。ロシア革命を成功させたレーニンが大粛清を断行した。「中東砂漠の英雄・アラビアのロレンス」はイギリス情報将校であり、アラブ社会を裏切った。現在もつづく中東紛争の元凶なのだ。こうした人間たちに焦点を当てる制作手法が内容をダイナミックにしている。
 
 やがてイギリスの思惑からアメリカが参戦して、溢れるほどの近代兵器と大量兵士を前線に派遣してドイツは敗れる。巨額な敗戦賠償金のため不景気になり、その社会不安の中でやがてヒトラーが登場してくる舞台になる。一回目はここで終った。
 
 歴史的英雄にはそれぞれ複雑な裏表がある。誰もが感じていることをこの番組は映像と理解しやすい解説によって明示した。自分のもつ情報や知識が一気に整理された。この理解のために、これまで歴史を学び、研究会に出てきたのだと納得した。
 
 「アラブ・日本 国際セミナー エルサレム問題を考える」(アラブ連盟毎日新聞社編、1981(昭和56)年8月発行)。先般の蔵書処分の際に残した一冊だ。当時、石油問題に本格的に取り組んでいて、この本の元になった国際セミナー「エルサレム問題を考える」に参加した。グラビア最終ページに載っている参加者の中に、若い自分の厳しい顔が写っている。