「白露ふうき豆」

  「奥萱路 白露ふうき豆 山田屋」、箱パッケージの表には赤地に金文字でそう書いた札が挿(はさ)んである。知り合いからお土産でもらった。手土産では山形の定番らしい。開けたらやや小粒のえんどう豆の緑色が鮮やかだ。皮を剝いて柔らかく煮てあるので、口に入れたら甘くて、しっとり溶けた。少し塩味が効いていて、粉吹き豆(?)って感じかな。
 
 こんなえんどう豆をいつか食べたことがある…が、どうも思い出せない。昔、祖母か母が自分で料理して食べさせてくれたのかもしれない。たしかにえんどう豆は栽培していたから、これと似たものだったかもしれない。砂糖をたっぷり使っているのは、いかにも一昔前のお菓子だ。甘党でもあった父の影響で、こうした豆類は自分の好物の一つだ。
 
 あの頃はどこの家でも野菜を作っていた。えんどう、ササギ、ジャガイモ、カボチャ、茄子、大根などがおかずや味噌汁の具になった。魚類は父が漁師で不自由しなかったので、普段の食べ物はほぼ自給自足できていたのだ。えんどう豆の蔓(つる)は瞬く間に延びていく記憶が―。お土産のふうき豆は皮むきだが、郷里の料理はそこまで手をかけなかった。
 
 枝豆もよく食べた。ビールを飲む最強のおつまみだった。かつて自分で冷凍枝豆を買ってきて、いつも冷凍庫に入れていた。ある日、中国製の枝豆に健康疑惑が報道された。あわてて袋を確認したら、やっぱり〈made in china〉だった。妻に話したら、「あっそう!」で終り。彼女は納豆以外の豆類をあまり食べない。豆腐や煮豆にはほとんど関心がない。