甘利明氏の演技力

  突然の「大臣辞任」は世間を驚かせた。甘利氏の記者会見は大成功だった。読売、毎日などの世論調査内閣支持率は微増気味横ばいと出た。「同情する」、「潔さ」、「有能なので惜しい」などの声がしだいに高まっている。その「語り」の間(ま)はまるで役者のようだった。
 
 記者会見の目的は、①一週間かけた調査結果報告、②自分は問題ないが、秘書が不正に使った、③秘書・事務所不祥事の責任を理由に閣僚辞職、④メディアの質問にはできるだけ丁寧に答える姿勢を示す。これらの場面場面で語るスピードと顔の表情は明らかに異なった。
 
長い調査結果は早口で、理解できなかった。飽きてきた頃、局面は一転した。使う言葉も変わった。「閣僚甘利明は―」など大時代的な、歌舞伎で言えば見得を切るような台詞が続き、「生き方」、「美学」と辞任の理由を説明した。涙も見せた。この部分が「潔い」と評価を得た。
 
すでに甘利氏から辞職した2秘書へ、甘利氏から石原新大臣へ、焦点が少しずつズレ始めている。日本人は自分から辞めた人には石を投げないという意見も聞かれる。甘利氏は有能な政治家だけにかばう声も多い。この先もその狡猾な演技力が発揮されるだろうか。マスコミ次第だ。