郷里メシで母を想う

 天気図をみるたび、北海道・積丹半島沖合いに激しい低気圧がある。シベリア寒気が日本海で発達して半島沿いに石狩湾を襲うコースだ。住民はこの厳しい西風をきらい、漁師は出漁を中止する。網をかければ大漁なのに、無念な思いで耐える。
 
 先月とどいた大鱈が冷凍庫にある。ブツ切りにして食べるつもりだが、日和を見てる。体が芯から冷えている時に、味噌味か、キムチ出汁で食べたい。今冬最後の大鍋で、思いっきり汗をかきたい。豆腐、白菜、エノキ、深谷ネギを入れるだけ。
 
 「故郷から伸びているいちばん丈夫な糸は……胃につながっている」。先月28日の朝日「折々のことば」。すごく納得した。積丹メシは母の手を思い出させる。冷気の中でせっせとつくったおかずや漬物の数々。それらをいま妹が再現してくれる。