M先生から「ヒジキ」

 たった今、M先生ご夫妻が車でわが家に「乾燥ヒジキ」を届けてくれた。山口県・大島出身の先生は郷里からヒジキやワカメなどが送られてくるたびに、おすそ分けしてくれる。瀬戸内海・関門海峡寄りの急流でそだった海の幸は、姿もミネラルバランスも優れている。坂戸の隣町・東松山市に栗林と畑を持っていて、今年は今日から手入れに来たとのお話だった。
 
 さきほど電話が入り、「道を間違えたようだ」。「何が見えますか」、「トミタという大きな看板がある。自転車屋さんだ」、「すぐ行きますから、そのままで」。奥様が店の前に立っていた。この周辺は似たような家並みが続くので、道に迷う人がとても多い。80歳代後半に入った先生が迷子になったからといって、年のせいだけではない。奥様がくすくす笑っていた。
 
 ヒジキやワカメは水に戻せば、数倍の大きさになる。海草の緑色や薄茶色は生命の色なのだ。口に入れて噛むほど健康になりそうだ。良い海草は良い海で育つ。山から川が運ぶ栄養分が河口にたまり、海草が育ち、魚貝の餌になる。この自然のサイクルが狂い、海水温度も上昇している。海草が育成しない磯焼け現象が全国規模で広がっている。
 
 私の故郷・北海道積丹半島でも磯焼けが進んでいる。関係者が懸命に回復を図っているが、なかなか困難らしい。子どものころに潜った古平の磯浜には昆布やワカメ、藻類がビッシリと生えていて、魚やウニやアワビが豊富だった。ゴーグル(当時は水眼器といった)をつけて陽が沈むまでCちゃんと泳いでいた。母が好きだったワカメの酢味噌和え、もう一回食べたい。