IT型認知症

 経済情報誌「エルネオス」の元木昌彦・対談で、ゲストの加藤俊徳氏が興味深い指摘をしている。「現在の若者はIT漬けで認知機能が劣化している。すでにIT型認知症の初期症状になっていて、社会に出たらいまの老人よりもかなり早く加齢型認知症になる」。
 
 加藤氏は医学博士、「脳の学校」代表、昭和大学客員教授。米国=アルツハイマー社会で研究した。現代人の脳は左脳化、自閉化で劣化症状を起こしていて、とくに視覚系、理解系、記憶系の脳番地の劣化が激しい。もっと右脳化して劣化を防ぐべきだと語っている。
 
 新聞記者は取材に行って相手の顔をみて、声を聞いて、文字に書くというプロセスをとった。このプロセスが記憶力を鍛えた。いまの若い記者はスマホICレコーダーで録音して、そのまま上司に送る人もいるらしい。自分の体と感覚で情報を取る認知機能が落ちている。
 
 昼間も夜も一日中スマホを使っていると、同じ脳番地しか使わないので新たな発想が湧かない。毎日メリハリのない生活になる。一番問題なのは喜びが少ない人生になってしまう。どのように一日を充実させ、嬉しい、楽しいという感覚を脳に与えるかが肝要だ。
 
 加藤氏は「ライフスタイルを変え、両手を使う時間を増やす」、「記憶力だけでなく思考力を高めるのが秘訣」と指摘。孫の世話、ダンス、料理などは情報量を増し、思考力を高める。日本人的な脳を鍛えるには茶道、華道、剣道、柔道などで、「道」で仲間と共有できる。