リーダーは新たな価値観を―

 いま起こっている多くの不祥事は杜撰(ずさん)さによる。三菱自動車、舛添都知事、JR乗務員など嘆かわしい現象の背景には、従来日本人の特質といわれてきた真摯な姿勢の著しい劣化がある。技を磨き手間をかける熱意が欠落してきた。その風潮が社会全体に波及している。
 
 それは経済と倫理のアンバランスに因る。松下やホンダなどかつての名経営者はそれぞれの「世のため人のためになる」強い信念を発した。それが今では「ばれなきゃ、なんでも有り」の世界に落ち込んできている。成長=利益が最優先、倫理は成長の邪魔になり害になるとの価値観だ。
 
 現役時代の取材での話①「日本人はネジを締めるとき、締め終わった後にもう一ひねり締めトドメを刺す思想」。これが日本製品の安全と品質を裏打ちしていた。この過程がグローバル競争によって崩壊してきた。標準化、効率化、利益化がすべてに優先するのだ。
 
 取材での話②「研究開発部門はデスバレー(死の谷)を克服して、成果を効率的に生み出せ」。できない部門は人員削減され、研究者が営業に回された。いま成長至上主義の限界が社会全体に巣食っている。個人レベルも同じだ。各界のリーダーに新たな旗印が求められている。