「メディア・コントロール」

 言語学者金田一秀穂氏がビジネス情報誌「エルネオス」で指摘するのは、2020五輪の東京誘致で2億2千万円が電通関係口座からシンガポール口座に振り込まれた件だ。日本を除く全世界で一斉報道されているが、日本ではうやむやのままになっている。電通が日本の報道機関をスポンサーシップで支配するから、怖くて言えないとの説もある。
 
 金田一氏は、「日本の報道自由度は、世界で72番目だという。その大きな原因は政府にありそうだが、勝手に自粛してしまうマスコミ、ジャーナリズムにも責任がある」と述べている。「選挙前だから、与党に不利な情報はあまり取り上げないという隠れた意図があるのではないか」、こうしたマスコミの勝手な自粛は深刻な問題だと警鐘を鳴らしている。
 
 日本人の新聞・雑誌への信頼度は主要国でナンバー1だ。「ちっとも自由に報道されていない新聞・雑誌を私たちは信じ込んで疑わない。いったいどうなっているのか」。金田一氏らしい見方だ。舛添都知事の喜劇人生劇場が五輪コンサル料問題の上蓋になっているのは確かだと思う。ただマスコミだってビジネスだ。中立・公正だけではないのだ。
 
再読中の「メディア・コントロール」(ノーム・チョムスキー集英社新書、2003年)は公正なジャーナリズムとはなにかを論じた知の巨人の一冊だ。学生時代に英語学の教授がチョムスキーの「言語構造論」を講義したが、チンプンカンプンだった。そのチョムスキーベトナム戦争後に民主主義と国際社会に切り込んで現代社会とこの時代を先駆けている。