記憶の糸巻き器

 浦和のMくんと久しぶりに会った。朝に電話があり、昼ごろ寄るからとのこと。二人で鳩山町蕎麦屋「満さく」に初めて入った。有名店なのでやはり混んでいて15分ほど待って席に着いた。天ざる蕎麦を食べながら北海道・積丹半島の話をした。
 
 Mくんの女子の幼馴染・Iさんが積丹町に住む我が妹の知り合いで、「お兄さんがMくんの友だちなんだね。Mくん元気でがんばっていると聞いて嬉しい。一度会ってみたいねぇ」と話したという。そのことを以前、Mくんに電話で知らせたことがあった。
 
 Mくんが語った話はファミリーヒストリーになった。青森から積丹半島にやってきたこと、Iさん一家との係わり、幼いころのIさんの思い出などを記憶の糸を巻き戻すように続けた。これまで知っていた彼の過去や思い出がスッキリとつながった。
 
 人は過去を語る時に一つの軸が必要だ。記憶をスムーズに回す糸巻き器が彼の話ではIさんだった。幼馴染とはそれほど自分の生い立ちにかかわっているのかもしれない。お互いに痛いところや痒いところはあるけど、来年6月の約束をした。
 
 二人で故郷の積丹半島を訪ねて行く。MくんはIさんに50年ぶりの再会を果たせばいい。そしてMくんと自分はお互い翌7月に到達する70歳の出発点とするのだ。