プロに深謝

 「明日から駅前クリニックへ異動になります。ありがとうございました」。女性技師のHさんが治療終了の準備をしながら話した。「えっ!」と言ったあと言葉が出てこなかった。10年余りも面倒をみてもらったので、そんなことは考えたこともなかった。しかし、一言でも感謝の気持ちを…。「たいへんお世話になりました」、深く目礼した。
 
 Hさんは技術的に優れていたし、患者との距離のとり方が上手だった。彼女とのやりとりは要点のみで十分に理解してくれ、困った時には実践的なアドバイスをしてくれた。長い期間看てきているので患者のツボがどこにあるかを心得ていた。口数は少なめだったが、ポイントは明示した。「さいなら!!」と帰るとき、胸が詰った。